【詩・うた】夏の終わりの月下の夢

月下の夢

目次

水面(みなも)から炎のようにゆらめき
僕は空へゆらりと飛び立った
まだ見ぬあなたを求め
月の影にたゆたう陽炎

きらめく幾千もの羽根が舞い踊る
迫りくる捕食者の脇をすりぬけ
僕はあなたをさがす
夢幻(ゆめまぼろし)をうつす月光

白く燃える夜は刹那の狂気
絡みあい結びあい消えていく陽炎
あなたへと続く光求め 
力の限り飛び続けた体を切り裂く月光

僕の命は尽きゆらゆら落ちていく
瞼の裏に まだ見ぬあなたを見つけ
包み込む あなたはかげろう

一陣の風が銀色に煌めく命を舞いあげ
一夜かぎりの月下の宴は陽炎のように
晩夏の夢と消え失せる

澄んだ月の光のながれに紛れ込んだ
ぼくたちは 悠遠(ゆうえん)をただようかげろう

たとえ形がなくても ふれあえなくても
さよならのない世界へあなたとふたり

ゆらゆらといつまでもいつまでもいつまでも
見果てぬ夜明けを夢見る僕はかげろう

さよなら、僕はかげろう

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